旅を終えて

旅を終えて1週間がたとうとしている。

お世話になった人たちに手紙を書き、旅で使っていた荷物を片づけ、

各地で撮りためた写真の整理する。

そんなわけで意外とやることは多い。

旅の余韻に浸ることもなくバタバタと過ごしている。

 

そのためだろうか。旅が終わったという実感がまるでない。

だからと言って旅を続けている感覚でもない。

 

旅の途中でゴールの瞬間、ゴールをしてからのことを考えることが多かった。

ゴールの瞬間は達成感に満ち溢れるんじゃないかと。

色んな思いが重なり合って泣き虫のおれは泣いちゃうんだろうと思った。 

そして、燃え尽きてしまって、しばらくは何も手につかなくなるような気がしていた。

 

でもなぜだろう。そうでもないのだ。

確かに達成感はある。

自分の夢で憧れだった自転車日本一周を終えたのだ。

やり遂げた感覚がないわけではない。

それにしては冷静な自分がいるから不思議だ。

自分でもよくわからない感情の中でこの文章を書いている。

 

 

さて、ここのタイトルを「旅を終えて」としたが、

旅でのことを1つ1つ振り返って書いていたらきりがない。

(その日の出来事、その時に感じたことは日記に書いているので、ぜひそちらを見てほしい。)

旅を終えた「今思うこと」を書いていこう。

 

 

まずは「人とのつながり」について。

旅に出る前は何でも1人で乗り越えていくという覚悟を持っていた。

そういう強さが必要だと思っていたし、孤独に立ち向かうのが旅だとも考えていた。

けれどそれは違っていた。

 

旅をすると多くの人に出会った。 仲間が出来た。

道端で声をかけてくれる人も大勢いた。

外との境界がない自転車だからこそ、ゆっくりと進む自転車だからこそ、

多くの出会いが生まれた。

 

また、日記をつけることの意味も大きく変わっていった。

インターネットを通じて多くの方からメッセージをもらったのだ。  

HPを作ることの主な目的は自分の旅を記録しておくためだった。

ついでに家族や友人知人に見てもらえればいいかな~とその程度に思っていた。

ところが、気づけば多くの人がHPを見てくれて、

たくさんの応援メッセージまでいただいていた。

 

この旅は1人きりの孤独な旅ではなかった。

多くの人たちに助けれられ支えられていた。

1人で旅をするからこそ、1つの出会いに大きな意味が生まれた。

出発が5分遅かったらこの人とは出会わなかった。

1本違う道を走っていたらあの人と出会うことはなかった。

出会いは奇跡だ。人との出会いやつながることの喜びを実感する旅になった。

 

 

続いては旅の中で起こるトラブルに関して。

長い旅の中では本当に多くのトラブルが起こった。

1番多いのはパンク。その他にもバックが壊れたり、タイヤが曲がったり。

数えたらきりがない。

最初の頃はパンク1つにしても本当に嫌だった。

トラブルがあると焦り、イライラしている自分がいた。

ところが徐々に考え方が変わっていった。

 

イライラしても仕方がない。もう起きてしまったのだ。

さぁて、この困難をどうやって乗り切ろうか。

そんな風に思うようになった。

困難な状況を楽しめるようになって、旅はさらに深いものになっていった。

 

 

そんな風に困難を楽しむと偉そうなことを書いておきながら、

この文章の最後は一番苦しんだことについて書いておきたい。

 

自転車日本一周で最も苦しんだこと。

それは1人きりのキャンプ場でも、真っ暗な山道でも、長くて急な上り坂でもない。

「旅に出るという決断」であった。

 

安定した日常から抜け出して未知の世界へ飛び込んでいく。

その時の不安と怖さは今でも忘れない。

迷い、悩み、苦しんだ。眠れないことも多かった。

でも、やっぱり後悔だけはしたくない。その思いだけが自分を動かしていた。

だからこそ、旅の中でも絶対に後悔はしないように進もうと思った。

思いっきり楽しもうと、そう思っていた。

 

自分が選んだ道は決して楽な道ではない。

でも、後悔はしたくない。楽ではないけど楽しい道を進みたい。

苦労して困難を乗り越えた道の先には、素晴らしい景色が広がっているに違いない。

車を使って簡単にたどり着いた場所、自転車で苦労してたどり着いた場所。

その2つが同じ場所であっても、見える景色がまるっきり違うように。

 

そうは言っても後悔はある。あの時こうしておけば良かったと思うことも多い。

でも、その気持ちがあるからこそ成長するし、次のステップに進めるんだと思う。

自分が選んだ道だからこそ納得できるし、新たな目標が出来るんだと思う。

 

 

実は書きたいことはまだまだたくさんある。

でも、なかなかうまく書けない。自分の表現力の乏しさが情けない。

 

とにかく、この旅でたくさんのことを感じて考えてきた。

冒頭で終わったという実感がないと書いたが、

なんとなくその理由がわかってきた気がする。

 

これから始まる新たな生活の中で、この経験を意味のあるものにしたいと思った。

たくさんの人に自分が見て聞いて感じてきたを伝えたい。

ひょっとしたら、一番大変なのはこれからかもしれない。

でも、それが出来て旅は終わるのかな。

 

いや、終わらないか。